こんな症状がありましたら、外来受診をおすすめします
- トイレでふんばらないと便が出ない
- 3日以上便が出ないことがある
- お腹が張って苦しい
- 硬い便が出る
- 排便後もすっきりしない(残便感)
- 便秘と下痢を繰り返し起こす
- 市販薬を飲まないと排便できない
- 薬の服用量が増えてきた
- 便に血液が混じることがある
- 下半身がむくんでいる
便秘とは
便秘は日本を含む世界中で多くの人々が経験する症状の一つです。日本のガイドラインでは、“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”を便秘としています。毎日出ないことは問題ではないのです。たとえば3日に1回だとしてもスムーズに排便でき、スッキリ感があれば便秘ではありません。
逆に毎日出ていても、残便感があってスッキリしない、お腹が張って違和感があるといった不快な自覚症状があるなら便秘です。つまり便秘かどうかは、あなたのスッキリ感が基準といえるのです。排便が困難であったり、排便の回数が減少したり、便が硬くなったりすることによって特徴付けられます。
日常生活に支障をきたすこともあり、心身の健康に影響を及ぼすこともあります。
便秘症の原因
便秘の背景には様々な原因が存在します。食物繊維が少ない食生活や水分摂取不足、運動不足、服用している薬剤の影響、生活習慣の変化、病気(糖尿病、パーキンソン病、甲状腺機能低下症)などが複雑に関連して起きます。
旅先で排便できないなどストレスや自律神経に関係している場合もよくあります。また、便意を我慢することが続くと、やがて便意が起こらなくなってスムーズに排便できるタイミングがわからなくなって便秘になっていくケースもよくあります。
便秘のタイプを知りましょう
便秘はそのタイプに合わせた治療が不可欠です。内服薬もタイプに合ったものを適切に服用しないと思うような効果がないだけでなく、悪化につながる可能性もあります。
便秘には急性便秘タイプと慢性便秘タイプがあり、慢性便秘タイプが一般的にイメージされる便秘です。慢性便秘タイプには機能性便秘と続発性便秘があり、それぞれがさらにいくつかに分けられます。
急性便秘タイプ
普段は問題がない状態で便秘症状が急激に起こります。内服した風邪薬などの影響やバリウム検査後で便が硬くなることなどが含まれます。
対処法・治療法
浣腸や摘便(指で掻き出します)を行って解消します。薬剤による影響の場合は、薬を変更や中止する必要があります。変更が難しい薬の場合は緩下剤などの内服を開始する場合があります。
慢性便秘タイプ
機能性便秘
機能性便秘はさらに3つのタイプに分けられます。
- 結腸通過時間正常型:便意が低下することにより起こる便秘(排便機能に問題はない)
- 結腸通過時間遅延:便が直腸に到達するまでに時間がかかる便秘(便を押し出す蠕動運動の低下が原因)
- 便排出障害型:排便機能の低下など、いきんでもスムーズに排便できない便秘
※現在は機能性便秘を上の3タイプに分けて治療しています。以前のカテゴリーを使った説明も下記でご紹介します。
- 弛緩性便秘:蠕動運動などの排便機能が低下することで、便を効率的に押し出せなくなっている状態です。刺激性の下剤を長期間服用した際に起こる場合もあります。高齢者に多いです。
- 痙攣性便秘:腸管の蠕動運動亢進により起こります。便の状態は、ウサギのようなコロコロとした便になります。原因は主にストレスとされており、過敏性腸症候群に含まれます。刺激性の下剤を多量に服用した際に起こる場合もあります。
- 直腸性便秘:便意があるのにトイレを我慢することが習慣化していると便意を感じにくくなり、発症する便秘です。便意は、便によって直腸が拡げられると脳に信号が送られて起こります。直腸性便秘は、こうした直腸の排便反射が低下して起こります。浣腸を日常的に使用することや、水圧が強力なシャワートイレの使用で直腸内に大量の水が注入されることを繰り返すことによって発症することがあります。
続発性便秘
器質性便秘
がんやポリープ、手術後の癒着など器質的な問題があって、便が出にくくなる便秘です。手術などで原因を取り除く必要があります。
肛門直腸疾患
切れ痔や肛門狭窄などで排便困難になる便秘です。
その他
病気や服用している薬の影響で起こる便秘です。病気では、パーキンソン病などの神経疾患、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌・代謝疾患があります。薬剤の影響では、向精神薬や降圧剤などに伴う便秘があります。
便秘の診察と検査
便秘症の診断は通常、医師が行う詳細な病歴の取り方と身体的検査に基いて行われます。
問診
排便状況や生活習慣、既往症などについて確認します。問題点や便秘のタイプ、原因などを推測します。この時点でだいたいの状態は把握できますので、悩んでいることや日々の状況を気兼ねなくお話しください。
触診
お腹に触れて、状態を確認します。また、肛門に原因がありそうな場合は肛門診察を行います。
検査
血液検査、腹部X線検査、CT検査、腸管移送能検査、大腸カメラのほか、バリウムを使って大腸を造影する注腸検査などから必要と思われる検査を行います。どんな検査を行うかにあたっては、患者さまと相談しながら決めていきます。当院で施行が難しい検査は可能な施設を紹介致します。
血液検査
全身の状態を調べ、便秘以外に隠れた病気がないかを調べます。
腹部X線検査
レントゲン撮影でガスや便の溜まり具合や分布などを調べます。
腸管移送能検査
レントゲンに写るマーカー付のカプセルを内服し、一定の時間ごとにレントゲン撮影を行ってカプセルの進み具合を確認します。腸管の移送能力の確認や、通過障害の有無を調べられます。当院では施行できないため、必要な場合は検査可能施設を紹介致します。
大腸カメラ、注腸検査
大腸がんやポリープなどが便の流れを邪魔することで便秘になっている場合があるため、それを調べます。大腸の長さなどによる便秘かどうかも判断できます。
便秘の治療
便秘の治療は、原因に応じて異なるアプローチを行います。食事や運動によって改善が期待できる場合には、生活習慣改善から治療を開始します。
生活習慣の改善
- 食事: 食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れることが大切です。野菜や果物、全粒穀物などを日常の食事に加えましょう。
- 水分摂取: 十分な水分摂取は便を柔らかくし、排便を容易にします。カフェインやアルコールは避け、水やお茶などの非カフェイン飲料を選びましょう。
- 運動: 定期的な運動は腸の運動を促進し、便秘の予防と治療に効果的です。
慢性的で頑固な便秘の場合は、ほとんどが薬物療法の併用が必要になります。年齢や便秘の程度、タイプなどに合わせて、薬の種類や量をきめ細かく調節しています。薬の効き具合は個人差で大きく変わり、排便に影響を及ぼしますので、外来受診で少しずつ量を変更したり、種類を増減しながら改善に一番合う薬やその量を探っていきます。
薬物療法
- 繊維補助剤: 便の量を増やし、通過を容易にするために使用されます。
- 刺激性下剤: 腸の蠕動を促進し、排便を助けます。
- 浸透性下剤: 水分を腸内に引き込み、便を柔らかくする作用があります。
- 漢方薬: 扱っているクリニックは少ないですが、有用な薬があります。当院では処方経験豊富な院長が必要に応じて処方します。
行動療法
- 排便トレーニング: 毎日決まった時間にトイレに行くことで、腸のリズムを整えることが大切です。
便秘の改善にいい食べ物・運動・ストレス管理法
最後に、便秘症の改善に役立つ具体的な食品例、運動方法、ストレス管理のテクニックについてご紹介します。
食品例
便秘症の改善には、食物繊維を豊富に含む食品の摂取が効果的です。以下はその例です
- 野菜: ほうれん草、キャベツ、にんじん、ゴボウなど
- 果物: リンゴ、バナナ、オレンジ、キウイフルーツ、プルーンなど
- 豆類: 大豆製品(豆腐、納豆)、豆類全般(いんげん豆、レンズ豆)
- 全粒穀物: 全粒粉パン、玄米、オートミールなど
- ナッツ類: アーモンド、くるみなど(過剰摂取に注意)
これらの食品は、水分と一緒に摂取することで、便の量を増やし、柔らかくする効果があります。また、納豆などの発酵食品を取り入れることで腸内環境を整えることも大切です。
運動方法
運動は腸の動きを活発にし、便秘の解消に役立ちます。以下のような運動がおすすめです
- ウォーキング: 日常的に30分程度の早歩きを心がける。
- ストレッチ: 腹部周りの筋肉を伸ばすストレッチを行う。
- ヨガ: 腸の動きを促進するポーズ(例:ねじりのポーズ、前屈ポーズ)を取り入れる。
- 水泳: 全身を使う運動であり、腸の活動を促します。
運動は週に数回、定期的に行うことが大切です。無理なく続けられる運動を選びましょう。
ストレス管理のテクニック
ストレスは腸の動きに悪影響を及ぼすため、ストレスを適切に管理することが便秘解消につながります
- 深呼吸: ストレスを感じた時には、深呼吸を数回行い、リラックスする。
- 瞑想: 毎日数分間の瞑想を行うことで、心身の緊張を解放します。
- 趣味の時間: 趣味に没頭する時間を持つことで、ストレスを軽減できます。
- 十分な睡眠: 良質な睡眠を取ることで、ストレス耐性が高まります。
ストレス管理は個人差が大きいため、自分に合った方法を見つけることが重要です。
これらの食品、運動、ストレス管理のテクニックを日常生活に取り入れることで、便秘症の改善につながります。しかし、これらの方法で改善が見られない場合は、お気軽にご相談ください。